海ミハ車両区

宮原太聖(Miha)の雑記帳。おおむね週1回更新でした。当面(記事がある程度貯まるまで)はおおむね月1回の更新です。

「学芸員の資格の難易度」という記事にツッコミを入れる

tap-biz.jp

Googleで一番上に上がってくるこの記事が、あまりにいい加減な事ばかり書いていて、段々とムカついてきたので、反論記事のようなものを書きたいと思います。

 

なお、

また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

とのことですが、この記事は、あまりにお粗末です。

 

 

 

学芸員の仕事内容」について

学芸員の仕事場は美術館や博物館、水族館、植物園などが主な職場です。展示されている作品や資料をお世話し、時には来場したお客様を案内して作品の紹介をすることもあります。

通常は、学芸員室や研究室と呼ばれる場所で仕事をします。作品や資料の収集、保管、調査などを行い、定期的に展覧会の企画開催をする役割があります。歴史的価値のある作品や資料を多くの方に伝えることが学芸員にとって使命となるでしょう。

大雑把には、そうなのですが、博物館法により正確・簡潔に記載されています。

博物館法第四条

4 学芸員は、博物館資料の収集、保管、展示及び調査研究その他これと関連する事業についての専門的事項をつかさどる。

仕事場は、博物館、博物館相当施設(美術館、水族館、動植物園など)ないし博物館類似施設(郷土資料館や企業博物館などの多く)が主です。

博物館類似施設は、学芸員の設置義務が無いのですが、上乗せ規制的に学芸員を募集している場合があります。

このほか、美術品輸送を専門とする業者やそのセクション、発掘調査も行う測量会社*1などでも、学芸員資格が求められることがあります。

 

学芸員の資格の難易度」について

学芸員資格は国家資格です。学芸員になるためには、学芸員資格者と同等の学力や経験を持っているのかを認定するために審査と面接が行われます

一般に、学芸員資格は、大学で学芸員課程を受講することで取るケースが圧倒的多数だと思います。

この記事で述べられている「審査と面接」は、「学芸員資格認定」を指しているものと思います。

www.bunka.go.jp

「試験認定」と「審査認定」とがありますが、何らかの理由で、学芸員資格を持たない職員を博物館・博物館相当施設へ配属させたい場合の「救済措置」のような感があります。

筆記試験は審査認定とも、難易度はそんなに高くないですが、しっかり勉強をして知識をつける事と面接の対策は必要です。

そうなんですか? よく知りませんが。

 

「大学で学芸員の資格はとれるのか」について

ここは、まあまあ問題無いかなと。てか、こっちのルートがメインだとは思うけど。

あと、「学費は17万から50万位」とありますが、何を根拠に書いてるのか。

幣学の場合、博物館実習の費用も合わせて、だいたい通常の学費+2万円ほどです。

大学によっては、社会人学生や科目等履修生の制度が充実しているので、社会人ならそういう制度の活用を検討されるといいと思います。

 

「博物館の学芸員に必要な資格」について

博物館の学芸員に必要な資格は、大学で必要な科目を履修する必要があります。大学に2年以上在学して博物館に関する科目の単位を62単位以上習得して、3年以上学芸員補の職に就いた者に資格が授与されます。

これも不正確です*2

博物館法には、以下のようにあります。

博物館法

学芸員の資格)
第五条 次の各号のいずれかに該当する者は、学芸員となる資格を有する。
一 学士の学位(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第百四条第二項に規定する文部科学大臣の定める学位(専門職大学を卒業した者に対して授与されるものに限る。)を含む。)を有する者で、大学において文部科学省令で定める博物館に関する科目の単位を修得したもの
二 大学に二年以上在学し、前号の博物館に関する科目の単位を含めて六十二単位以上を修得した者で、三年以上学芸員補の職にあつたもの
三 文部科学大臣が、文部科学省令で定めるところにより、前二号に掲げる者と同等以上の学力及び経験を有する者と認めた者

先の記事の書き方では、第五条第二号しか無いかのようです。これは、学士の学位が出なかった場合の話で、通常は第一号で出ると思います。

 

「履歴書に書きたい学芸員の資格」について

履歴書に記入する時は「〇年〇月文部科学芸員資格取得」で良いでしょう。

「文部科学芸員資格」って何?

 

「社会人でもとれる学芸員の資格」について

そんな時、役立つのが大学の通信教育です。指定されている科目を学んで条件をクリアすれば学芸員の資格がとれます。大学の通信教育は最短で1年で修了する学校もあります。仕事をしながらでも学べ便利でしょう。

通信制大学はとても便利ですし、何気に凄い大学もあったりする*3のですが、「最短で1年で修了する」大学って何?

流石に1年で修了する大学は無いでしょう。仮にあったとしても、それは制度上のみの話であったり、あるいは、単純にディプロマ・ミルでは。

 

学芸員資格取得の条件」について

なんでこの項目がここに来ているのか謎ですが、ここはまあ許容範囲内かな。

「学士」が「学資」になってるけど。

 

学芸員補とは何か」について

内容自体はまあまあ合ってるのですが、今時、学芸員補での採用なんて無いと思います。

学芸員がたらふく量産されてますので……。

 

学芸員の資格の正式名称」について

学芸員の所轄・主菜は文部科学省になるので正式名称は「文部科学芸員」が正式名称になります。履歴書に記入する時は正式名称を書きましょう。

文部科学芸員って何?(2回目

こんな呼称、まるで聞いた事がありません。そもそも、学芸員というか博物館行政を所管しているのは、文科省というよりは文化庁です。

博物館法

第四条

3 博物館に、専門的職員として学芸員を置く。

強いて言うなら、昨今は、ディプロマ・ミルの対策のため、資格を認定した機関の名称を併記することが増えてきているように感じられます。

「〇〇年〇〇月学芸員資格取得(〇〇大学)」といった表記ですね。

 

学芸員の資格の取得方法」について

細かい項目がいくつかありますが、ツッコムのも面倒なぐらいのグチャグチャです。

こんなにグチャグチャなのは、おそらく、通常の資格に関するひな形をそのまま学芸員資格に当てはめてしまっているせいだと思います。

 

学芸員の資格の証明方法」について

文部科学省にはこのように書かれています。

URLがリンク切れしてます。そして、この書き方では孫引き状態になっています。

文化庁のサイトに、昭和42年に各大学宛てに出された通知が掲載されています。

昭和42年1月24日文社社第48号

各関係大学長あて社会教育局長通知

文部省では従来から大学において博物館に関する科目の単位を修得したものに学芸員の資格証明書を発行交付してきましたが,博物館法第5条の規定では,大学において博物館に関する科目の単位を修得した者は当然学芸員の資格を有することになっていますので,任命権限が採用時において学芸員の資格を確認する際の便宜等のため発行してきたこの学芸員の資格証明書は,今後は事務手続き改善のためとり止めることにいたしました。

ついては,下記の点おふくみのうえ,遺漏のないようお取り扱い下さるようお願い申し上げます。

大学において博物館に関する科目の単位を修得した者は,当然学芸員としての資格が発生いたしますが,これを明らかにする必要がある場合は,大学が発行する卒業証明書および博物館に関する科目の単位取得証明書を任命権者(都道府県および市町村の教育委員会等博物館の管理機関)に提出すること。

参考条文(博物館法)

第5条次の各号の一に該当する者は,学芸員となる資格を有する。

1学士の称号を有する者で,大学において文部省令で定める博物館に関する科目の単位を修得したもの

学芸員資格証明書交付のとり止めについて | 文化庁

大学を介さずに学芸員資格を取得する場合は、合格証書が授与され、合格証明書も発行されるようです。

博物館法施行規則

(合格証書の授与等)
第十四条 試験認定合格者及び審査認定合格者に対しては、合格証書(別記第四号様式によるもの)を授与する。
2 筆記試験合格者に対しては、筆記試験合格証書(別記第五号様式によるもの)を授与する。
3 合格証書を有する者が、その氏名を変更し、又は合格証書を破損し、若しくは紛失した場合において、その事由をしるして願い出たときは、合格証書を書き換え又は再交付する。
(合格証明書の交付等)
第十五条 試験認定合格者又は審査認定合格者が、その合格の証明を願い出たときは、合格証明書(別記第六号様式によるもの)を交付する。
2 筆記試験合格者が、その合格の証明を申請したときは、筆記試験合格証明書(別記第七号様式によるもの)を交付する。
3 一以上の試験科目について合格点を得た者(筆記試験合格者を除く。次条及び第十七条において「筆記試験科目合格者」という。)がその科目合格の証明を願い出たときは、筆記試験科目合格証明書(別記第八号様式によるもの)を交付する。

 

学芸員の仕事」について

学芸員の仕事は、博物館法に基づき文化施設の専門職員として働きます。文化施設とは、美術館、科学館、博物館、動物園、植物園、水族館などです。これらの施設内に補完する資料などを収集して研究をしたり、生理分類をして保管する仕事が主です。

誤字が酷い……。

文化施設」という表現は、正確ではありません。

博物館法
第二条 この法律において「博物館」とは、歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管(育成を含む。以下同じ。)し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、あわせてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関(社会教育法による公民館及び図書館法(昭和二十五年法律第百十八号)による図書館を除く。)のうち、地方公共団体、一般社団法人若しくは一般財団法人、宗教法人又は政令で定めるその他の法人(独立行政法人独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。第二十九条において同じ。)を除く。)が設置するもので次章の規定による登録を受けたものをいう。

文化施設であっても、図書館は、博物館法の博物館から除外されています。

 

日本の学芸員は人数がとても少ないので、多くの作業を兼任するケースが多いです。

これはそう。

 

学芸員の資格のメリット」について

学芸員は給料が安く、地味な仕事が多く雑務ばかりです。が高い職業ですが、あまり待遇が良いとは思えません。しかし、現場で働いてみると、憧れだった絵画や展示物を目の当たりできるメリットがあります。好きな事を仕事にする充実感がある職業でしょう。

誤字脱字が多くて何がなんだか……。

給料や待遇は、それこそ館によって違うのでは……と信じたい。

 

学芸員のデメリット」について

ここはまあ、そうかなぁという感。ただ、学芸員資格と実際の職業としての学芸員とを混同しているような気もします。

学芸員資格を取るにあたって受講する各科目は、教養としてとても良いものが多いので、大卒らしい教養を身に着けるためにも、学芸員資格ぐらいは取っていても悪くはないのではないかと思います。

 

学芸員は憧れの職業」について

誰目線?

 

所感

全体として、非常に粗い、クオリティの低い記事だと感じました。事実誤認や誤字脱字だらけ。章構成も謎。博物館類似施設にちょこっと勤務経験がある程度の私でも、さらっと読んだだけで山ほど問題個所を発見できてしまいました。

こんなものがGoogleの検索トップに上がるというのは、本当に信じられない。

こういうアホな記事に対抗するためにも、学芸員課程を持っている大学は、もっとWeb上での情報発信をするべきだと思います。

*1:最近は、開発行為を行うに際して、発掘を行わないといけない場面が増えてきていて、自治体に代わってそういう発掘・調査を請け負う会社も増えてきているようです。

*2:そもそも、日本語がおかしい。

*3:放送大学とか放送大学とか放送大学とか。