
東海地方には変な乗り物がいくつかありますが、現在運行されているものの中で、とくに変わっているもののひとつが、ガイドウェイバス「ゆとりーとライン」といえるでしょう。

一応、出入庫系統として印沼~高蔵寺があるようですが、通常は、高蔵寺~小幡緑地~大曽根で運行されています。

車内は、普通のバスと同じです。高蔵寺から小幡緑地までは、普通のバスとして、主に愛知県道15号線を走ってゆきます。

高蔵寺を出ると、すぐに庄内川を越えて左岸側へ。名古屋市守山区を西へ西へと走ります。
ゆとりーとラインがバスとして走る愛知県道15号線の沿線は、近年、市街地化の進展が著しいようで、ベビーカーを引く親御さんを含め、利用は相当多いようです。

東海地方に住んでいる人なら、特徴的なローカルCMで有名な「龍泉寺の湯」(龍泉寺ウォーターパーク跡地)を通過すると、バスは「一般車進入禁止」と書かれた施設に入っていきます。入り口のあちこちに「入るな」という看板があり、やや、物々しい雰囲気です。

すぐ横には、名古屋ガイドウェイバスの本社があります。
この施設で、ゆとりーとラインは、バスから電車にトランスフォームし、小幡緑地に到着します。
仕組みを解説しましょう。
ゆとりーとラインは、見た目こそバスそのものですが、実は、専用軌道に直通できる新交通システムなんです。
名古屋の中心部から離れた区間は「平面区間」として、一般のバスと同様に道路を走ります。しかし、中心部に近い、渋滞が懸念されるような区間は、専用の高架をガイドウェイを使って走ります。車両には、ガイドウェイに沿うための専用の車輪が備わっていて、高架区間に入ると操作により展開される仕組みになっています。
平面区間は、普通のバスと同じ法令で走ります。適用されているのは、道路交通法。運転免許は大型二種。運行しているのは、名古屋市営バスです。かつては、名鉄バスやJR東海バスの担当便もありましたが、現在は名古屋市営のみになってしまいました。実は、このガイドウェイバスは、名古屋市営バスの中で最も東を走る路線だというマニアックなレアさも備わっています。
他方、高架区間は、ガイドウェイに沿って運行されるため、路面電車とかと同じような鉄道(軌道)の扱いとなっています。適用されているのは、軌道法。「無軌条電車」という、かつて都市部でよく走っていた、「トロリーバス」という道路上の架線から電気を取って走る電気バスの一種と同じ扱いとなっています。運転免許も、鉄道の免許が必要です。この区間の運行は、第三セクターの名古屋ガイドウェイバスの担当です。なお、「無軌条電車」ですが、車両自体は普通のバスと同様にディーゼルエンジンで動いていますので、「無軌条電車(非電化)」という、矛盾塊みたいな状態になっています。

鉄道扱いなので、速度制限の標識も、鉄道のものが使われています。

高架区間に入っても、乗り心地は普通のバスとそう大差ありません。ただ、景色は凄く良くなります。まさに、バスに乗ったまま、鉄道旅行を楽しんでいるような不思議な感覚。

途中の川村駅で降りてみます。……駅です。誰がどう言っても、これは駅です。

駅名板もこの通り、しっかりあります。

出発案内表示器もあります。

車両が無ければ、この通り、普通の新交通システムのような雰囲気。
実際に行ってみて気付いたのですが、プラットフォームと軌道との間に高さがあまり無いのは、安全上、案外良いかもしれません。

こうやって見てみると、まさに「空飛ぶバス」ですね。

高架区間は、毎時5本以上運行されています。最大で18本もの高頻度輸送。といっても、車体は所詮バスなので、輸送能力は、大分限界がある模様。

ガイドウェイバスは、ガイドウェイにガイド車輪を物理的に当てて、ハンドリングを行う仕組みになっています。そのうえ、一般道を走行する際には、道路交通法の問題で、ガイド車輪を格納しなければいけません。
こういった特殊な機構が必要なせいで、車両価格がどうしても高くなってしまいますし、改造ができる(種車にできる)車両できない車両がどうしても発生してしまいます。

現在、このガイドウェイバスについては、色々な議論が行われているようです。たとえば、高架区間については、現在のガイドウェイ方式をやめて、自動運転にしてしまおうという実験も既に行われています。
近い将来、ガイドウェイバスは、ガイドウェイバスでなくなるかもしれません。気になる人はお早めに。

駅から外に出てみます。
サインなんかも、普通に鉄道なんだよなぁ。

こうやって見上げてみると、大分気合を入れた作りになっています。本当に、ただの新交通システムに見えますよね。実際、新交通システムに転用可能な作りになってるんじゃないかな。

川村駅のすぐ近くには市営バスの川村バス停があります。
守山11は、新守山駅から小幡緑地方面を結ぶ系統なので、必ずしも並行している訳ではありません。

ゆとりーとラインに乗っていると、信号待ちをしている守山11系統を上から眺めつつ追い抜く様子を見ることができます。ちょっと不思議な気分。
ガイドウェイバスは、鉄道ファンからはバスだと思われていまいち趣味の対象に思われない事が多いのですが、鉄道オタクとして見ても、とても面白い乗り物です。そして、高架区間はきちんと「鉄道」です。
高架区間だけでも乗る価値はあると思います。
(訪問:2025年7月)