海ミハ車両区

宮原太聖(Miha)の雑記帳。最近は月1回更新ですが、それすらそろそろ危ういかも……。

道の駅飛驒古川いぶし(2025年3月廃止)

道の駅飛驒古川いぶしは、岐阜県飛騨市岐阜県道90号沿いにあった道の駅です。「岐阜43」が付番されていました。

 

www.gifu-np.co.jp


2025年2月、登録取り消しが報じられ、翌月一杯をもって廃止されました。道の駅は、国土交通省の所管なのですが、中部運輸局管内では初の廃止事例です。

報じられた直後に葬式鉄ならぬ「葬式道」をしに行こうとしたのですが、仕事上でイレギュラーな事態が多発した結果、報じられてからおおよそ1ヶ月後となる3月16日になってようやく訪れることができました。

 

 

(いずれも2025年3月19日確認)

 

 

飛驒古川いぶしは、2004年4月に開駅を迎えました。元々は、古川町が設置を決めたようなのですが、開駅の時には合併して飛驒市になっていました。

 

開駅当時、中部縦貫道がまだ無かったので、飛驒清見ICから飛驒市・神岡町方面へ向かう際、県道90号が一番の近道でした。

とはいえ、山間を走る片側1車線の道路で、とくに同駅以北は線形も悪く、沿道に休憩できるようなコンビニは一切ありません。

 

そもそも道の駅という制度は、建設省(現在の国土交通省)が整備していた「簡易パーキングエリア」が前身となっています。

 

第5次交通安全基本計画 - 内閣府

 

第120回国会 衆議院 建設委員会 第3号 平成3年2月20日

 

○松本(龍)委員 

(略)
 それから、道路行政についてお尋ねしたいと思いますけれども、建設業も今は交通事故による死亡事故が非常にふえております。また、運輸産業に従事をする人たちは、一般道路をいわゆる仕事として使っている。非常に道路との相互性が高いわけでありますけれども、そういった中で今運輸産業に従事する方の労働時間、さらにもしわかれば、その居眠り運転などの事故の件数がわかれば教えていただきたいのですが。

 

○鈴木説明員 お答え申し上げます。
 自動車関係の運転者関係の労働時間でございます。平成二年の道路貨物運送業、この労働時間が二千五百三十八時間でございます。それから道路旅客運送業、これが二千四百二十三時間でございます。いずれも前年よりも大幅に縮小しておりますが、ほかの産業の全産業計が二千五十二時間ということで、ほかの産業に比べますとかなり長いという実態でございます。そういう観点から、こういった産業の労働時間の短縮につきまして、今後一層努力してまいりたいというふうに考えております。

 

○松本(龍)委員 今、二千五百三十八時間とおっしゃいました。これは実はとんでもない数字なわけであります。そういう中において、やはり高速道路は非常に設備が整っているというか、休憩場所や駐車をする場所は整っているわけですけれども、一般道路において公的なそういう施設があるのか、また道路構造令ではどうなっているのか、お尋ねをしたいと思います。

 

○藤井(治)政府委員 お答えいたします。
 今、先生の御指摘の道路における休憩所といいますかに関しましては、今までは専ら長距離あるいは広域的な交通の主役として、確かに高速自動車国道を主といたしまして自動車専用道についてサービスエリアを設けてまいっております。一般道路につきましては、沿道利用が即可能なものでございますから、これまで民間施設によってサービス供給をお願いするといいますかがなされてきた、こういうのが実態であろうかと思います。しかし、今先生も御指摘のように、長距離道路輸送の増大、これが高速自動車国道のみならず一般の国道等主要な幹線道路においてふえてまいっておることも事実でございますし、その中で過労な運転事故を防止して、そして安全で安心して通れる道路交通環境を確保するという観点から、ドライバーの休憩の問題をきちっと受けとめてやっていく、こういうことは非常に重要になるということを私ども認識しております。
 そういう意味から、実は私ども、道路の用地を買収する際に、道路の際に一筆を買いますとどうしても残地が出る場合もございます。そういうようなものを利用し、あるいはそれに若干買い足しをするなどして、既に全国的に見ますと数十カ所に及ぶこういう簡易なパーキングエリアといいましょうか、こういうものを施行してきております。一番大事なのはやはり便所あるいはトイレ、あるいは安心してそこで車をとめて仮眠ができる、こういうような性格を持った場所であろうと思っております。
 実は、そういう意味も含めまして、平成三年度から新たに策定させていただきます第五次特定交通安全施設等整備事業五カ年計画、この中に新規施策といたしまして、都市間の主要な幹線道路で長い区間にわたってほかに民間施設を含めて実態上休息のための施設がないようなところでは、こういう過労な運転事故を防止してそのことが交通事故全体に非常に役立つ、こういうようなことを考えて、簡易パーキングエリアの制度をぜひさせていただきたいということで、平成三年度からこのような施設を積極的に対応させていただきたいと思っております。
 しかし現実には、場所というものが大事でございます。そういう残地などを利用した場所というのは全国的に数千カ所もあるようでございますから、そういうものを改造してできるものは使っていく。あるいはやはり便所が一番大事だと思いますので、そういうものをつくるとなると隣近所の御理解をいただかないとまた簡単にはいかないというようなこともありますので、今後十分慎重に扱ってまいりますけれども、私ども、こういう簡易パーキングというようなことを通じて、先生の御指摘の政策はぜひとらせていただきたいと思っております。

 

○松本(龍)委員 先ほど、高速道路はいわゆる設備が整っているということを私は申しました。つまり、高速道路が利用できない人たち、いわゆる運送関係にしましても、協力業者であるとか、そのまた協力業者であるとか、高速のお金が払えない業者の方々がおられるわけです。そういうところは、また労働時間もひっきょう長くなってきているわけであります。そういった中で、この間私はお話をお伺いしたのですが、交通の邪魔になると言われたり、また例えばトラックは御遠慮くださいというふうなドライブインもあるわけです。つまり、車体が大きいものですから駐車場が要る。しかも今、そういう業者の方々は一人でしか運転をされていません。お客様が一人なわけです。つまり、大きい割にはお客さんは一人というわけで、トラックお断りというようなドライブインが今あるわけです。
 そういった中で、今局長おっしゃったように、これから果敢に取り組んでいくというようにおっしゃいましたけれども、基準法に伴う行政指導でも四時間に三十分休憩をとりなさい、ILOの百五十三号条約でもまたそういうふうに指導されている。そういった中で、これからしっかりと今のことを受けていただいて取り組んでいただきますようにお願いを申し上げたいと思います。

 

第120回国会 衆議院 建設委員会 第3号 平成3年2月20日

 

○松本(龍)委員 

(略)
 道路局長にお尋ねいたしますけれども、第十一次道路整備五カ年計画の問題であります。
 私はこれを実行するに当たって、さまざまな問題があると思います。総括的な問題あるいは細かな問題等々あるわけですけれども、道路行政に関連して、私はおととしの二月二十日に質問をいたしました。高速道路などは休憩や駐車の場所がある程度設備が整っておりますけれども、いわゆる一般国道あるいは都市の幹線道路等々、なかなかそういう設備が整っていない。その新規施設の実施状況等々伺ったわけですけれども、当時局長は、「平成三年度から新たに策定させていただきます第五次特定交通安全施設等整備事業五カ年計画、この中に新規施策といたしまして、」「簡易パーキングエリアの制度をぜひさせていただきたいということで、平成三年度からこのような施設を積極的に対応させていただきたい」というふうな答弁をいただきました。このことに関連して、その後の新規施設の実施状況、またどのような予算措置がとられているのかお尋ねいたします。

 

○藤井(治)政府委員 お答えいたします。
 先生御指摘のとおり、九一年二月二十日の委員会で私、先生にそのようなことを答弁させていただきました。私ども平成三年度から簡易パーキングエリアについては実施をさせていただいております。三年度及び四年度で全国で五十九カ所に着手をさせていただいております。既に十数カ所は完成いたしております。
 ただ問題は、こういうことを着手すると同時に、実はそれぞれの地方、地域からいろいろな要望が出てまいりました。私ども、これを考えた時点では駐車のスペースをとるのを最前提として、トイレあたりでいいのかな、こういうふうに思っておりました。現実にでき上がったところは、トイレには一応身障者用のものを設けるように指導しておりますから、そういうものを含めてでき上がってきているわけでございますが、各市町村から見ますと、せっかく公共空間を道路の際につくるんだから、それならばもうちょっと一工夫して色をつけたい。例えば、地元物産の見本市やそれぞれの地域の文化、歴史、観光案内あるいは地域の人々の触れ合いの場にも利用できないか、こういうような要望が自然発生的に各地から出てまいりました。
 そこで、この簡易パーキングエリアを、単に簡易パーキングエリアとしてつくる部分もあろうと思いますけれども、あわせて道の駅という、まあ俗称でございますが、こういう形として、ドライバーの休憩のみならず触れ合いの場として活用するということで、既に道の駅は全国で二十七カ所に着手しております。これの登録を今現在やっておりますが、全国に御紹介して、実は駅長会議などというものも昨今開きましたけれども、百件ほどの御申請をいただいております。
 今後この簡易パーキングエリア、実例でいいますと、二丈浜玉といいますか、国道二百二号に二丈町というところがございます。ここに二丈簡易パーキングエリアがございます。これは約四億円ほどかかるもので平成五年度に完成いたしますが、これなどは、実は道の駅というよりもどちらかというと簡易パーキングエリアとして先行いたしましたので、身体障害者用のトイレはもちろん含んでおりますが、公衆電話、休憩所という段階で玄界灘を見る、こういうことでございます。
 こういうものを、今言った幅広いいろいろな意味の活用を図られたものにしながら、今後各地域で御要望を出し、それを我々が応援していく、こういうことです。さらに第十一次では積極的に考えたいと思っておりまして、共通のシンボルマークもつくりました。道路地図や案内標識等にも案内するように御協力をお願いしております。今後とも一生懸命やりたいと思います。

 

第126回国会 衆議院 建設委員会 第4号 平成5年3月25日

 

道の駅飛驒古川いぶしがある場所は、東海環状道から東海北陸道に入って最初のPAである瓢ヶ岳PAからおおむね1時間ほどの場所にあり、また先に述べたような慎重な運転が必要な道沿いという点でも、まさに、ドライバーのための休憩施設という本来の目的としても必要な道の駅だったと思われます。

 

高山国道事務所「国道158号高山清見道路(中部縦貫自動車道)」(2025年3月19日確認)

しかしながら、飛驒古川いぶしが開駅した2004年12月、中部縦貫道高山清見道路のうち高山西IC~飛驒清見ICが開通。2007年には高山西IC~高山ICが、2013年には高山ICに接続する国道41号高山国府バイパスが飛驒市方面の高山市国府町まで繋がりました。

これらの道路整備の結果、飛驒市方面への交通のほとんどは、中部縦貫道と国道41号へと流れてしまったものと思われます。

 

飛驒清見IC側から飛驒古川いぶしを見ると、こんな感じ。この少し手前側に、近隣集落へ入っていく別の道が分岐していて、ちょっと紛らわしいです。

 

反対側は、こんな感じ。両側とも、急なカーブの先に道の駅への入り口がある構造で、交通量がそれなりに多い道路だったら、ちょっと緊張する作りです。

……まあ、(いくら路側帯とはいえ)こういう写真を撮れているという時点で、交通量はお察し。

 

報道によると、地元住民らによる組合が経営してきたものの、高齢化や利用者減少などを理由として2024年11月に休業へと追い込まれていたようです。売却先を模索したものの、結局事業を引き継ぐ会社が現れず、そのまま廃止(道の駅指定取り消し)となってしまいました。

張り紙には「運営会社変更に伴い、売店営業を休止」とありますが、実際には、売店だけではなく、道路情報等を提供するエリアまで閉鎖されていました。使えるのは、お手洗いだけで、実質的には巨大な公衆トイレとなっていました。スタッフの人も、当然いません。

 

道の駅スタンプは、建物の外の、庇の下に出されていました。

休止前からこの場所だったのか、それとも、休止に際してスタンプラリーをしている人への配慮として出してくださったのかはわかりません。

無人の割には、状態は良好です。……尤も、こんな場所までスタンプを押しに来る人は、相当のマニアでしょう。

大きい方のスタンプのイラストは、古川祭の「起し太鼓」のようです。

 

スタンプが設置されていた場所は、レストランの前でした。カーテンの隙間からちょこっと中を覗いてみると、かなり生活感のある状態で、もしかしたら、除雪に来たスタッフの人が休憩室として使っているのかもしれません。

 

なぜか絵馬が飾られていました。……なぜ?

しばらく滞在していたところ、数台の車がこの道の駅を利用していました。……といっても、ほとんどはスタンプを押してすぐ去っていったのですが、1台だけ、たばこを吸うために止まった車がありました。

たしかに、考えてみれば、最近は車内も禁煙にしている会社が多いですし、愛煙家からすると切実な問題かもしれません。喫煙スペースがあったとしても、最近は、建物の裏手とかに追いやられることが多いですが、この飛驒古川いぶしの場合は、なんと、道の駅の入り口ド真ん前という好立地の所に喫煙スペースが設けられています。これには愛煙家もニッコリ。

 

自販機は稼働していましたが、ゴミ箱は撤去されています。

なお、自販機は現金のみで、なんなら新1000円札は使えません。

 

閉鎖された道の駅情報館。各種パンフレットが所狭しと並べられていますが、手に取られることはありません。

奥の方には、飛驒古川いぶしの道の駅認定証が掲げられています。

 

休業後は国交省の職員さんすらも入ることができなかったのか、2024年冬の冬季通行止めの案内が建物の外から貼られてしまっています。

 

お手洗いには、地元小学校の児童が書いた交通安全の標語が飾られていました。こういう短冊自体は、飛驒市内の他の道の駅にも貼られているようです。

せっかくなので、飛驒古川いぶしが廃駅になった後は、別の道の駅に移されると良いんですけど……。

 

そのお手洗いのすぐ横に、何やら人を誘う看板が立てられています。

 

中部の道の駅「飛騨古川いぶし」

https://www.cbr.mlit.go.jp/michinoeki/gifu/gifu43.html(2025年3月19日確認)

 

 

飛驒市公式観光サイト飛驒の旅「道の駅 飛騨古川いぶし」

https://www.hida-kankou.jp/spot/274(2025年3月19日確認)

 

この道の駅の一番のウリが、この「いぶし銀命水」と名付けられた湧き水でした。

どこにあるのだろうと思って、矢印に従って進んでみたのですが、

 

道の駅の裏手、バックヤードのような所に行き着いてしまいました。

営業を休止する前に使われていたと思われるものが色々放置されています。

 

で、肝心の湧き水ですが、これ……でしょうか……?

全く除雪されておらず、近づくことすらできませんでした。

 

こたつの上にある茶碗

サイクルラックはありません。

道の駅は、近隣農家が生産した農産物を産直販売してることが多いのですが、この道の駅では、「卯の花市場」と称していたようです。何で「卯の花」かというと、岐阜県は一部の県道の愛称に花の名前を充てているのですが、飛驒古川いぶしがある県道90号が「飛驒卯の花街道」なんですね。

右側には岐阜県内の間伐材で作られたベンチが積まれています。

左側のマジックミラーが使われている扉の先は、従業員控え室でしょうか。

 

軒先には、ツバメの巣の跡が沢山あります。フンが下に落ちないように、板まで設置されています。また一部には、カラス避けと思われる網まで設置されていました。

ただ、そこまでしていても、今もきちんと形の残っている巣は、私が見た限り、見当たりませんでした。

 

閉鎖が決まって1ヶ月が経っていますが、駐車場や屋根はおおむね除雪されているようです。

駐車場の一部に赤色の塗装がみられますが、これはヘリポートなのだそう。

 

大型車用の駐車枠は2台分ありますが、こちらは除雪は中途半端でした。

とはいえ、ほとんど誰もいないので、大型車が来ても然程困らないでしょう。

 

謎の像&石碑。

終末みのある風景。

 

 

 

インフラ整備というのは、とても難しいものです。今の時代、様々な場所で、同時進行的に、国や県や市町村や場合によっては民間企業が、同時進行的に様々なインフラ整備のプロジェクトを進めています。

それぞれ連携してやっていければ一番理想だと思われるかもしれませんが、一方で、リニアや新幹線の開通を念頭にインフラ整備してたら肝心のリニア・新幹線の建設が遅延してしまって計画がぐちゃぐちゃになるとかよくある話で。

また、昔と違って設備も立派になり更に建設前の環境アセスメントなどの手続きも増えたことにより、計画から完成まで相当な時間が掛かるようにもなりました。その間、世の中はどんどん変化していきます。

結果として、がんばって完成までこぎ着けたもののその時には既に過剰な設備になってしまっていたり、逆に不足しすぎていて更に工事が必要になったりというのも、どんどん珍しくなくなってきているように思います。

 

中部ブロック「道の駅」連絡会(2019)中部道の駅MAP、中部ブロック「道の駅」連絡会事務局。

もし、飛驒古川いぶしの周辺の道路整備が、何らかの事情で実際より大きく遅れたり中止になっていたら、もしかしたらこの道の駅は廃止になることもなかったかもしれません。しかし実際には、中部縦貫道も高山国府バイパスも無事に開通し、交通はとても便利になりました。

懐古趣味的な気持ちが湧くのは湧くのですが、これも時代の流れとして仕方の無い事なのだと思います。周辺の道路事情を考えると、廃止はやむを得ないと思いますし、また、ここで無理に残すよりは、役割を失った以上は潔く廃止してリソースは別の場所に使った方が良いのではないかと思います。

 

 

 

 

おまけ

流石にそのままはマズいかなと思って加工しておきましたが、この道の駅、某政党のポスターを貼るための掲示板が設置されていました。

道の駅というのは、いくら民間企業なりNPO法人なり市民団体なりに運営委託されていたとしても、あくまで公共施設ですので、普通、こういった特定の政党の看板が付いてることなんてまず無いですし、付いてたらおかしいと思うのですが……。

ちなみに、ポスター自体は剥がされていましたが、丁度政党ポスターと同じぐらいの大きさのポスターを貼ったような跡がありました。いくら「地域の広報板としてご活用ください」と書かれているとはいえ、政党名や連絡先とかががっつり書かれてますし、ちょっと不用意だと思います。

道の駅って、道の駅として新規に作られたものだけではなく、民間のドライブインとか温泉施設とかを後から道の駅として指定するものもあるのですが、もしかしたら、この道の駅は後者で、民間の施設だった頃の名残とかで付いたままになっているのかもしれません。

 

(訪問:2025年3月)