海ミハ車両区

宮原太聖(Miha)の雑記帳。おおむね週1回更新でした。当面(記事がある程度貯まるまで)はおおむね月1回の更新です。

某所の非常勤学芸員を辞めました

雇用流動化が著しいIT系などの分野では、会社を辞めた際や転職した際などに、どういった経緯で(理由で)辞めたか、今後はどうするかなどをまとめた「退職エントリー」を書いて、公開するという風習があるようです*1

退職とはいえ所詮は非常勤ですし、そもそも私みたいな「文系」の人間がこういったことをやるのは割かし珍しいかとは思うのですが、せっかくの機会ですのでやってみようと思います。

 

 

 

非常勤学芸員とは

というわけで、令和元年度一杯をもって非常勤学芸員を辞めました。より正確には、任期を満了しました。

学芸員とは、博物館や資料館、美術館、動物園水族館、科学館などで、展示物の収集、保存管理、展示公開、研究調査を行う専門職です。博物館法で博物館・博物館相当施設には学芸員を置かないといけないことになっています。つまり、国家資格です。

私が務めていたのは、博物館類似施設のいわゆる郷土資料館です。博物館法で指定されていない施設なので、別に学芸員を置く義務は無いのですが、慣習的に(あるいは上乗せ規制的に)学芸員資格を持つ人の求人が出ていることがあります。

学芸員の資格は、大学の学芸員課程を受講することで取得できます。教職と同じですね。教職は資格が更新制になりましたが、学芸員は更新がありません。

ただ、学芸員の場合は、新卒で即就職といくことは余程の運と実力とが無いとまずあり得ません。大抵は即戦力を求めているので、実務経験が必要となります。そしてその実務経験とは、博物館などでしか得ることができないという*2。本末転倒というか、求職者からすると非常に困った状態になっています。

ただ、地方の郷土資料館だと、その辺りが若干ゆるいことがあるというか、何かの拍子で採用が決まることがあります。おそらく私の場合もその一例でしょう。内部の事情はよくわかりませんが。

地方の郷土資料館の場合、市町村(文化財課や観光課、教育委員会など)が直営で行っている場合と、外部の団体に管理運営を委託している場合とがあります。私の場合は前者でした。

今、地方の郷土資料館などでは、常勤の職員がほとんど居ないことが珍しくないようです。この手の求人は、大抵、ハローワークに出ているのですが、「週5日勤務の非常勤」というものが大多数*3です。私が務めていた所は、現場の職員のほぼ全員が非常勤でした。

他所の話など色々聞いていると、どうも、学芸員という職業も、雇用が流動化しつつあるようです。良し悪し色々あるとは思いますが……。

 

非常勤学芸員のお仕事

先に述べた学芸員のお仕事、展示物の収集、保存管理、展示公開、研究調査ですが、「学芸員」の字面から想像される「高尚」なイメージとは全く異なっています。実際には、人手が全く足りておらず、観覧券やグッズの販売、シフト管理、展示室の清掃、高所での電球の交換、庭木の剪定、外壁の修理、雪かきなど、館に関わるありとあらゆる仕事をこなさなくてはいけません。

そして、そういう実際の大多数の仕事は、大学や学芸員実習ではまずやらないことばかりです。私としては、そもそも、実務経験を積むために求人に応募したので、そもそもこういった求人があったこと自体がありがたかったです。

当然、お客さんへの展示物解説や色々な対応(資料の閲覧請求や、資料や展示に関する質問など)のお仕事もあり、この辺りは普通のサービス業(接客業)となんら変わりません。団体のお客さん(近所の小中学生の遠足とか)相手のガイド業務は、とても楽しかったです。

給料も、普通のコンビニバイトやTAとかと比べると、まあまあ高いです。尤も、市民の大切な財産である文化財を扱う現場として見合う額・待遇か否かは、議論があるかもしれません。まあ、こればかりは、有権者の判断如何かなぁと思います。

 

退職の理由

法改正などに伴う体制の変化

地方公務員法が改正されて、私のような非常勤の公務員のあり方が少し変わりました。で、ちょっと色々あって、予算とか体制とかを色々と見直すのではないかという噂がありました。

私の場合、学業が本業なわけで、万が一「週5日勤務の非常勤」みたいな勤務態勢になっちゃったらどうしようという気持ちがありました。

本業の多忙化

私の分野は、隣接分野が非常に多種多様で、必然的に色々な分野の論文を読んだり学会に行ったりしなくてはなりません。またその学会も、日本のあちこちで開催されるため、学会当日だけではなく移動のため前日・翌日も休みが欲しい……となりがちです。

色々と無理を聞いて貰ったりもしていましたが、申し訳ないという気持ちが日に日に……。

また、兼任している他所(非常勤講師)でのお仕事が増えることや、肝心要の博論の執筆作業で自分の能力的キャパが限界に近づいていました。

がんばれば両立できるのかもしれませんが、そうすると、新規に何かに取り組むことができなくなってしまいます。

勉強のために博物館巡りをするといったことも難しくなるので、仮に、このままある程度安定的に勤めることができたとしても、知識のアップデートができなくて、将来的に詰むなぁと。

その他

ぶっちゃけ、タイミングです。神様の思し召しだと思います。うん。

 

これからのこと

とりあえずは、学業と非常勤講師に専念します。先が見えないのが辛い所ですが、私に限った事ではないでしょうし、そもそも人生なんてそんなモンなのかもしれません。

 

欲しいものリスト 

www.amazon.jp

 慣習により、晒しておきます。

*1:ちょっと古い?

*2:一応、博物館の運営委託を受けている専門の会社(そういうのがあるんですよ!)に就職するなどもあり得るでしょうけど、そっち方面はよく知りません。

*3:「非常勤」とは一体……。