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宮原太聖(Miha)の雑記帳。おおむね週1回更新でした。当面(記事がある程度貯まるまで)はおおむね月1回の更新です。

岐阜県選挙区の選挙公報を読んでみる(2019年参議院選挙)

2019senkyo-sanin.go.jp

 

明日、2019年7月21日(日曜日)は、参議院選挙の投票日です。既に期日前投票を済ませた方もいらっしゃるかもしれませんが。

よく、「誰に投票すればいいかわからない」「誰がどんな公約を言ってるのかわからない」っていう声を聞きます。たしかに、わざわざそれぞれの候補者の選挙演説を聴きに行ったり、疑問点を事務所に問い合わせたりするのは、大変かもしれません。

しかし、ご存知でしょうか。選挙の際には、それぞれの候補者の公約をまとめた「選挙公報」というものが出ているのです。それは、投票所で必ず配られていますし、Webでも公開されています。……少なくとも、岐阜県では。

ということで、第25回参議院通常選挙岐阜県選挙区の選挙公報を読んでみたいと思います。

 あくまで、選挙公報を読んでみるということなので、各党の詳細な主張などは、それぞれの党の公式サイトなどを参照してください。

 

www.pref.gifu.lg.jp

一応、公平に読むつもりですが、私個人のイデオロギーに起因して多少の偏りがあるかもしれません。一番良いのは、ご自身で選挙公報を読むことです。

 

 

坂本雅彦(NHKから国民を守る党・新人)

兵庫県出身の、貸し切りバス会社社長です*1

NHKスクランブル放送の実現

この人の主張は、たったひとつ。「NHKスクランブル放送の実現」だけのようです。シンプルですね。

原状、NHKは、日本国民なら全員(全家庭)受信料を払うことが前提となっています。全員が受信料を払うので、スクランブルというお金を払った人しか見れないようにするような仕組みは使われていません。ところが、現実としては、NHKの受信料を払っていない人や、払いたくない人(NHKを見ない人)というのも存在します。そこが不公平だという主張ですね。

たしかに、スクランブルを導入すれば、きちんと受信料を払っている人にとっても、NHKを見ないという人も、公平に思えるかもしれません。放送というサービスによって利益を得てる人(NHKを見てる人)がお金を負担すべき、というのは、当然かもしれません。

しかし、災害時にお金を払ってる人しか防災情報が見れないとなったら、不公平に感じるのではないでしょうか*2。また、受信料収入が減り、品質の高い報道や取材、番組作りができなくなるかもしれません。あるいは、今より酷くなるかも。そして、視聴者を受信料を払う人に限定するということは、受信料を払えない貧しい人との間で情報の格差を生むかもしれません。

……あと、ちょっと気になったのですが、この人、仮に当選してNHKスクランブル放送が実現したら、議員辞職されるんですかね? それとも、全く何もしない幽霊議員みたいな感じになってずーっと残るの?

 

大野泰正自由民主党・現職)

 2013年まで羽島選挙区選出の岐阜県議会議員として3期務めた後、参議院議員になって1期目を終えた現職議員です。2016年から国土交通大臣政務官になっています。2018年から、自民党副幹事長、自民党国土交通副部会長、自民党女性局次長などに就任し、参議院では予算委員会と文教科学委員会に所属しています。元全日空社員で、父親は運輸大臣や労働大臣を務めた大野明です。

公約は6コ。結構多いです。

防災・減災

国土強靭化で国民の命を守る、とのこと。素晴らしいですね。心強いですね。この人は、国交省政務官自民党でも国土交通部会の副部会長なわけなので、専門なのでしょう。また、元々羽島選挙区選出の人ですから、洪水対策などに以前から関心が強いのかもしれません。

ただ、「想定外にも耐え得る」「未来を見据え予防に重点を置いた」防災・減災対策には、きっと、相当な予算が必要になることでしょう。あるいは、災害リスクが高く、かつ、維持が困難な山間部の集落などは、いっそ閉村にしてしまって、比較的災害リスクが低い地域に集約してしまった方が、山々をコンクリで固めるより安く確実に防災・減災できるかもしれません。

あと……、「想定外にも耐え得る」って、本当にできるんですかね。結局のところ、「宇宙人が侵略してくるリスク」「超巨大な小惑星が降ってくるリスク」「北朝鮮からミサイルが飛んでくるリスク」「日本海原発が全部ぶっ壊れて伊吹おろしと共に放射性物質濃尾平野に流れ込んできて汚染されるリスク」とかまでは、流石に考慮してないわけですよね? 多分。そりゃあ、「想定外にも耐え得る」って言ってしまった方が聞こえは良いんでしょうけど。

社会保障制度

国民皆保険制度の堅持と年金制度充実をはじめとして確かなセーフティーネットを構築する、と。セーフティーネットは、大事です。チャレンジのためには、セーフティーネットが必要です。ただ、国民皆保険制度の堅持を訴えていますから、そこには別に手を加えるつもりは無いようです。

しかし、これもまた非常にお金の掛かる話です。2018年度予算では、社会保障費に32兆9732億円を計上しています。新規国債発行額は33兆6922円ですから、だいたい、新規国債発行額と同額ぐらい社会保障にお金が掛かっているということになります*3。あるいは、単純に人口で割ってあげると、国民1人あたり59万円/年ほど掛かっているということにも。

「予防や健康管理を促し」とも述べていますから、もしかしたら、予防医療で病院へ行く人が減れば医療費も減るだろうということを狙っているのかもしれません。

教育政策

子育て環境の整備、総合的な子供の安全対策、貧困対策などを行うとのこと。

具体的なこと、たとえば、待機児童の削減とか、高校の無償化とか、そういう文字はみられません。これもまたお金が掛かる事ではあるので、なかなか難しい所もあるのかもしれません。ただ、「生まれ育った環境に左右されない教育・貧困対策」と述べているので、貧困家庭向けに何かしらの対策を考えているのかもしれません。

農林水産業

農林水産業を「国土の保全・防災に寄与」「国の基」と評価して、守り、成長産業化を図るとのこと。これも、具体的に一体何をやろうとしているのか、ちょっとよくわからないですね。「高付加価値農産物の輸出促進」とか、「野菜工場養殖場の設置促進」「ジビエ流通の拡大」など言って貰えれば、あーなるほどとなるんですけど。まあ、そこは、農協とか地方議会議員のお仕事でしょうか。

一方で、畜産については、ちょっと具体的です。「豚コレラで苦しむ畜産関係者に寄り添った支援」を行うとのこと。

コレラの問題は、岐阜県から愛知県にかけて相当深刻な問題となっています。どうも、イノシシを介して広まっているようで、いくら感染豚を処分しても車を消毒しても、なかなか感染拡大を止められていません。いくら豚コレラが人には感染しないとは言っても、なかなかに辛い状況です。

今回立候補した候補者の中で、豚コレラについて言及していたのは、愛知県選挙区も含めてこの人だけでした。

地域活性化

中小企業などを活力を向上させる政策を総動員し、人手不足解消や生産性向上を図るとのこと。……適切な給与が支払えない体力の無い企業には、さっさと市場から退場いただいて貴重な人材を労働市場へと返上して貰った方が、よほど人材不足解消や生産性向上に良いんじゃないかと思うんですけどねぇ。

また、歴史や伝統文化を守り発展させるとのこと。この辺りは、いかにも保守系の政党ですね。

一宮西港道路

最後に、物凄く具体的な公約です。一宮JCTから名古屋港までを結ぶ一宮西港道路を早期に建設し、日本海と太平洋とを結ぶ道路ネットワークを構築するとのこと。

内陸県の岐阜県にとって、こういった港へ向かう高速道路は、とても重要です。一宮西港道路ができれば、岐阜県から見れば、余程東濃地方を除けば、弥富にある名古屋港コンテナターミナルまで物凄く近くなります。三重県や奈良方面にもアクセスしやすくなり、きっと物凄く便利になるでしょう。岐阜県民としては、なかなか魅力的な公約です。

……ただ、そんな露骨な我田引鉄ならぬ我田引道してええのとは。

 

梅村慎一(立憲民主党・新人)

岐阜市出身、岐阜市在住で、十六銀行の行員から司法書士になった方です。現在、立憲民主党岐阜県連合副代表。国民民主党の支持と、社会民主党の推薦も受けています。いわゆる、統一候補というやつですね。

選挙公報が他の候補者と比べると、やや取っ散らかったような印象を受けます。また、現政権への批判の色彩が物凄く強いです。

ダイバシティの尊重

ダイバシティ(多様性)について言及しているのは岐阜県選挙区ではこの人だけのようです。ただ、具体的なことが何も書かれていません。もっと、「ダイバシティを尊重した公教育の拡充」「外国人労働者の人権確保・技能実習制度廃止」とか、具体的なことを言って欲しい所。

憲法問題

憲法は、政府が守るべき事柄を定めた法律です。施政者は、憲法を守らなければいけません。ところが、今の政府は憲法をきちんと守っていないのではないか、守らせる必要があるのではないか、という問題提起です。

ただ、「権力の暴走」が具体的に何を指しているのかは述べていません。また、暗に現政権が違憲だと述べているようなのですが、そもそも違憲審査は最高裁が行う事なので、違憲だと思うならば、司法に訴えるのが筋だと思うのですが。

自民党の安倍首相は、憲法9条改正を時たま口にしますが、この人としては、「平和憲法の理念を全力で守ります」とのことで、どちらかというと憲法9条改正には反対の立場のよう。この辺りは、色々な考え方があると思いますが、「平和憲法の堅持」を明確に述べているのは、3人のうちこの人だけです。

情報公開

比較的具体的です。公務員が取得した情報の管理を徹底し、国民の知る権利を強化するとのこと。

「知る権利」は、憲法21条(表現の自由)あるいは16条(請願権)を根拠とする権利です。政府がきちんと仕事をしているのか確認し検証するためにも、情報の公開はとても大切です。

ただ、現実として、なかなか難しい問題もあります。たとえば、「公文書」の範囲はどこまでなのでしょうか。電話応対のメモ書きも公文書でしょうか? 公務員の手帳は? 自宅のカレンダーは? そして、それら公文書は、一体いつまで、どこに、どのように保管するのでしょう。これは、場合によっては、相当な予算と人員とが必要になります。

社会保障制度

「財政を徹底検証し、安心できる年金・福祉政策を建て直します」とあり、年金制度はどちらかというと改革が必要だという立場のようです。

子育てや介護からの会社復帰に積極的に取り組む企業への支援や、保育・教育・医療・介護職の賃金アップも主張しています。これも、なかなかお金が掛かりそう……。とくに、賃金アップは、税金で補填するのか、それとも、値段を上げるのか。

教育政策

けっこう具体的です。待機児童の解消、保育の質の確保、学童保育の充実、高校授業料無償化の範囲拡大、給付型・無利子奨学金の拡充などを行うとしています。

大変結構ですね。実現すれば。

インフラ整備

老朽インフラの更新や移動手段の確保は、地方に住む人間としては結構嬉しい公約です。

ただ……、「住み慣れた土地で末永く安心して暮らせる」ということを考えると、過疎で将来的に消滅することが確定しているような山村とかでも土砂崩れが起きないよう山をコンクリで固めたり、赤字とガソリンを垂れ流してバスを維持したりする必要がありそうです。

せっかく革新系の政党なんですから、いっそ、「限界集落の集約化・転居を支援」ぐらい言っても良いような気がします。

 

まとめ

選挙公報に載っている公約をまとめると、だいたいこんな感じになるかと思います。

立候補者名 坂本雅彦 大野泰正 梅村慎一
新人・現職  新人  現職(1期)  新人
所属政党  NHKから国民を守る党  自由民主党  立憲民主党
支持・推薦  

 

社会保障 言及なし
  • 予防や健康管理を促す
  • 国民皆保険制度の堅持
  • 年金制度充実
  • 年金・福祉政策建て直し(財政を徹底検証)
  • 保育・教育・医療・介護職の給与アップ
教育

言及なし

  • 子育て環境の整備
  • 総合的な子供の安全対策
  • 貧困対策
  • 待機児童の解消
  • 保育の質の確保
  • 学童保育の充実
  • 高校授業料無償化の範囲拡大
  • 給付型・無利子奨学金の拡充
中小企業支援 言及なし
  • 活力を向上させて人材不足解消や生産性向上
  •  子育てや介護からの復帰に取り組む企業へ支援
 インフラ整備 言及なし
  • 強靭な道路網の整備(とくに一宮西港道路の早期建設)
  • 老朽インフラの更新
  • 移動手段の確保
その他
  • 災害予防に重点を置いた国土強靭化政策
  • 農林水産業保護・成長産業化
  • コレラで苦しむ畜産関係者に寄り添った支援
  • 歴史や伝統文化を保護・魅力ある地域づくり

 こうやってまとめてみると、傾向が見えてきます。

坂本雅彦は、NHKスクランブル放送化に特化しています。NHK改革については、他の候補者は言及すらしていませんので、関心がある有権者はこの人に投票するといいかもしれません。

大野泰正は、どちらかというと防災やインフラ整備、農林水産業支援に関心が強いようです。豚コレラに言及した候補者はこの人だけなので、岐阜県の畜産業関係者からすると嬉しいかも。また、一宮西港道路の早期建設を訴えており、この道路が一刻も早く欲しいという有権者も、この人に投票すると建設が早まるかも。

梅村慎一は、社会保障や教育関係でかなり具体的な公約を立てています。とくに介護職は給与が低い割に仕事がキツいということで離職率が高かったりなかなか人材が集まらなかったりしているそうですから、その給与が上がるなら、人材も集まるかもしれません。他にも、子育て世代や介護世代が助かりそうな公約も沢山。

 

国政議員選挙となると、どうしても、TVなどから得た各党のイメージを元に選んでしまったり、あるいは、選挙カーで連呼されていてなんとなく頭に残っていた名前を書いてしまったりしがちです。

しかし、こうやって各候補の公約を、選挙公報を読んでまとめてみるだけでも、投票するためのヒントが掴めてくるのではないでしょうか。

 

 

 

皆さんの投票行動の参考になりますと幸いですが、前述のとおり、私個人のイデオロギーによって色々と情報が歪んでいる可能性があります。ぜひ、ご自身の目で選挙公報を読み、ご自身の頭で考えてください。

誰に投票したにしても、結果その候補が当選したとしても落選したとしても、あなたが自身で考えて決めた選挙行動は、何よりも尊く、また、現に国政を動かす一部となっているのです。