名鉄名古屋駅から中部国際空港へ向かう際、太田川駅の手前に「聚楽園駅」という駅があります。
皆さんは、この駅で降りたことはあるでしょうか? もし降りたら、ホームから、こんな、ちょっと不思議な景色を見ることができます。
ホームの向こうの山から顔を出す大仏。ここは奈良でも鎌倉でもありません。愛知県東海市です。
駅前広場に出てみても、大仏。「へいしゅうくん」とかいうゆるキャラに負けないインパクト。
仏縁に誘われるがまま(?)、山を登ります。
巨大な仁王像。ペットボトル(500ml)は大きさの比較のために置きました。
近くで見ると、筋肉に血管が浮き出ていて、迫力を感じます。
胸に付いたコケが、まるで遺跡のような風合いを出しています。
そして、金剛力士像の向こうには、巨大な大仏が。
この大仏、昭和初期に、名古屋の財界人であった山田才吉によって作られたものです。
山田才吉は、日露戦争時に軍用缶詰を作って財を成した後、東海地方……というか名古屋市内と名古屋近郊の各地で観光開発を行った人物です。
割烹旅館とその割烹旅館に誘客できるような何かを一緒に作るというのが彼のやり方だったようで、たとえば、南陽館と呼ばれる割烹旅館を作った際には、すぐ横に名古屋教育水族館を作りましたし、北陽館という割烹旅館を可児市土田地区に建てた際には、すぐ横を流れる木曽川で川下りを始めました。
ここ、東海市では、聚楽園旅館というものを建て、すぐ近くにこの大仏を作ったというわけです。
かつては、胎内巡りもできたそうですが、老朽化もあって現在は閉鎖されています。
……一体中はどうなってるのでしょう。気になります。
大仏のすぐ横には、このような碑が。
山田才吉は、なかなか不運な人物だったようで、観光施設を作る度に、火災や台風など災害によって破壊されるということを繰り返していたようです。そういった事も、彼に大仏造営を決断させたのかもしれませんが、多額の費用の大部分を借金によって賄ったため、亡くなる頃には深刻な経営難に陥ってしまったよう。
事業は他人の手に渡り、今や、彼が作り上げた幻の観光地と共に、半ば忘れ去られた存在になっています。
聚楽園大仏は、現在、東海市によって聚楽園公園として整備され、市民の憩いの場となっているようです。
とても落ち着いた、良い場所です。あるいは、中部国際空港を利用する外国人向きの観光地とも言えるかも知れません。
(旅行日:2018年5月31日)