日本国内では2017年4月から、話題に上がったり沈んだりしている謎のSNS「Mastodon」。私も何度かこのブログで取り上げましたし、IT media NEWSには記事大量にありますし、もう、それが何なのかなんて、みんな知ってるでしょう?
この記事は、「Mastodonって何なのかだいたいわかったけど、じゃあ、どうやって始めりゃいいんだ?」って人のためのものです。
……えっ? マストドンをご存知無い? またまたぁ。
そんなあなたは、ぜひ、目の前にある機械を使ってお調べになってください。大概1年以上前の記事ばかりでしょうけど、それでも充分参考になるはずです。
マストドンは分散型のSNSだということは、既にご存知ですね?
マストドンはActivityPubという規格が使われていて、同じActivityPubを採用している他のSNS(Pleromaなど)からも相互にフォローしたりリプを送ったりできるってこともご存じですね?
マストドンには、ご承知の通り、多くのインスタンスが存在し、インスタンスの垣根どころかSNSの垣根すらも飛び越えてフォローし合えるので、原理的には、どのインスタンスにアカウントを作っても、問題ないはずです。
とはいえ、せっかくだから、より自身の趣味趣向に合致する所にアカウントを作成したいというのが人情というものでしょう。そこで、インスタンスの選び方について、解説したいと思います。
ただ、この選び方は、あくまで私が勝手に考えていることであって、強制するつもりは毛頭ありません。選び方考え方は人それぞれで然るべきですから。
1.バージョンは新しいか?
あまりに古いバージョンのインスタンスは、管理が放棄されているか、管理者に充分な管理能力が無い可能性があります。私の感覚ですと、1.5.x以下は流石に古すぎです。
今はまだ問題は起きていませんが、今後、セキュリティー上の問題や、互換性の問題が発生するかもしれません。
関連して。あまりに独自機能が多いインスタンスは、バージョンアップが困難になり、バージョンアップから取り残されることがあります。ただ、独自機能が入っているということは、独自機能を入れることができるだけの技術を持っているということでもあります。
2.about/moreを読もう
https://(インスタンスのドメイン名)/about/more/ に、そのインスタンスの詳細が記載されています。このページに書かれた情報は、とても重要です。アカウントを作る前に必ず確認するようにしましょう。
2-1.管理者は登録されているか?
about/moreには、管理者のアカウントと連絡先が表示されているはずです。これが表示されていない所は止めといた方がいいと思います。誰が運営しているのかわからないということですから。
2-2.管理者のトゥート頻度
管理者のアイコンが表示されている場合、それをクリックすると、管理者のユーザーページに飛びます。
さて、直近のトゥートは何日前でしょうか? 活発に使われていそうですか? それとも、放置されていそうでしょうか?
2-3.ローカルルールに同意できるか?
about/moreに戻りましょう。about/moreにはそのインスタンスのローカルルールも記載されています。このローカルルールに同意できない場合、そのインスタンスにアカウントを作るべきではありません。
よくある誤解なのですが、マストドンはTwitterと比べて、削除や規制の基準が緩いというわけでは必ずしもありません。管理者によっては、Twitterよりも厳格なルールを敷いている場合もあります。決して無法地帯ではありません。
インスタンスの運営方針は、インスタンスを選ぶ際に最も重要な要素だと思います。特定の地域や趣味に特化したインスタンスもあります。そういったインスタンスごとのテーマも、インスタンスを選ぶ際の参考にするといいでしょう。
ちなみに、あまり知られていない話ではありますが、Pawooは、無断転載に物凄く厳しいです。Pawooに居れば、まず間違いなく無断転載botなどを見ずに済みます。もし、無断転載に辟易しているのであれば、現状、Pawoo一択です。
3.個人鯖か企業鯖か
マストドンのインスタンスは、誰でも作ることができます。サーバーの技術が無くても、ホスティングサービスを使えば、ブログを作るかのごとく簡単に作れます。
つまり、多種多様な個人や団体がインスタンスを作っているわけです。「個人運営は信用できないから企業運営のインスタンスを選ぶべきだ」という記事をよく見ますが、私はそうは思いません。
3-1.企業鯖のメリットデメリット
企業鯖は、まず、運営母体がどのような団体なのかというのがはっきりわかりやすいというメリットがあります。たとえば、Pawooやfriends.nicoは、それぞれ、PixivやドワンゴというIT企業が運営しています。元々SNSを運営するIT企業ですから、SNSの運営に関するあらゆるノウハウが社内で蓄積されているものと思われ、安定した運営が行われるのではないかと期待できます。
しかし、同じく企業鯖であった3.nu(運営:ナイセン)は、残念なことに、僅か1年で閉鎖されました。企業鯖だからといって、安定した運営が行われるとは限らないのです。
そもそも、世の中には色々な企業があります。中には、自社の利益のみのために、悪意を持ってマストドンを利用しようとしている企業もあるかも知れません。企業だから安心……というのは、あまりに能天気な考え方だと思います。
3-2.個人鯖のメリットデメリット
個人鯖は、個人が趣味でやっているインスタンスです。趣味ですから、管理者が飽きない限り、運営は続いていきます。ホスティングサービスを使ったインスタンスであれば、そのホスティングサービスは企業が提供しているわけなので、企業鯖相当か若干劣る程度の安定性は期待できるかも知れません。
また、多くの個人鯖は、運営のために寄付を募っています。誰からいくら寄付が来て、何にどれぐらい使って、差し引きいくらであるかなどの会計を公開しているインスタンスもあります。もし、お気に入りのインスタンスを見つけたならば、あなた自身が直接コーヒーやラーメンをおごることで、インスタンスを育てていくことができます。
ただし、あくまで個人です。飽きたら止めちゃうかも知れません。そこまで技術も無く動作が不安定かも知れません。悪意を持った管理者も居るかも知れません。マストドンに擬態して、その実態は、メールアドレスやパスワードを収集しているかも。そうでなくとも、ある日、自分のインスタンスを丸ごと企業に売り払ってしまうかも知れません。
3-3.結局のところ
運営が企業か個人かというのは、些細な問題だと、私は思います。企業鯖だろうが個人鯖だろうが、考えるべき点はひとつだけです。運営を信用できるか。それだけです。
あなたが今、アカウントを作ろうとしているインスタンスの管理人は、あなたの「言論の自由」を一時的にしろ預けるに足る人物・法人ですか?
4.その他
4-1.インスタンスの雰囲気・文化
マストドンにはローカルタイムライン(LTL)というものがあります。そのインスタンスで投稿された全てのトゥートが流れているタイムラインなのですが、インスタンスによって雰囲気が大きく異なります。
ローカルタイムラインの流れは、インスタンスによっては、ログインしていなくてもトップページから見ることができます。
まあ、これに関しては、とりあえずアカウントを作ってしばらく使ってみて、合わないなと思ったら他のインスタンスに引っ越す……でもいいとは思います。
4-2.ユーザー数
ユーザー数が多ければ多いほどいい……というのは、Twitterなどの古い中央集権型のSNSの話です。マストドンは、適切なユーザー規模というものがあります。
ユーザー数が少なすぎると、LTLの流れが緩やかすぎて、人によってはつまらないと感じるかも知れません。しかしユーザー数が多すぎると、LTLの流れが速すぎ、とてもじゃないですが追えません。
また、ユーザー数が多すぎると、当然、変な人やあなたの気分を害するような人も増えてきます。そういうのが嫌だと思うのであれば、よりユーザー数の少ないインスタンスへ移った方がいいでしょう。
4-3.どうしてもインスタンスを選べない場合は
星の数ほどあるインスタンス。どこにアカウントを作ればいいかきっと迷うことでしょう。
どうしても決められないということであれば、.socialやmstdn.jpなどの別段テーマが決まっていない、そして比較的ユーザー数多めのインスタンスを選ぶといいでしょう。ただし、ずっとそこに居続ける必要はありません。色々なインスタンスを見て、ゆっくり安住の地を探してみてください。
マストドンには、連合タイムライン(FTL)というものがあります。このタイムラインには、他のインスタンスのユーザーのトゥートも流れます。他のインスタンスのユーザーである場合、ユーザーIDをよく見ると、ユーザー名の後ろ、@以下にそのユーザーが所属するインスタンスのドメインが書かれています。「なんか、この人面白いな」と思ったら、その人が所属しているインスタンスを覗いてみましょう。きっと、インスタンス選びの参考になると思います。
インスタンス選びは、家探しに似ています。管理者は大家さんですね。
マストドンは、簡単に引っ越しができます。フォローなどの情報をインポート・エクスポートすることで、ホームTLを他所のインスタンスにそのまま再現することができるのです。
ですから、あまり難しいことは考えず、とりあえずどこでもいいからアカウントを作ってみる、飽きてきたり合わないなと思ったら遠慮なく他のインスタンスへ引っ越す……を、葛飾北斎のように繰り返していけば、きっといつか、あなたにとって最もふさわしいインスタンスへたどり着けると思います。
どうか、特定のインスタンスの雰囲気や使い勝手を、マストドン全体のものだと思わないでください。Twitterへ戻る前に、他のインスタンスへの引っ越しを、あるいは、マストドン以外のActivityPub対応SNSを試していってください。Twitterへ帰るのは、それからでも遅くはないはずです。